the McFaddinに出会ってから、京都で最も面白いバンドとして彼らを挙げ続けている。ボロフェスタでも、ブッキングを考える軸に、必ず彼らがいる。現代と過去と未来を彼らなりの解釈で融合させたサウンドは見事だし、技術に彩られた激しいライブは観ていてとても心地いい。サウンドもライブも一つの到達点に辿り着こうとしている彼らを中心に、2023年の音楽シーンは何か面白いことが起こりそうでワクワクしている。そんな期待を持って、the McFaddinのRyosei Yamadaにインタビューを行った。
インタビュイー : Ryosei Yamada(the McFaddin)
インタビュアー : 飯田仁一郎(ボロフェスタ、OTOTOY、Limited Express (has gone?))

──新曲の“betbetbet”ですが、その前にリリースした“Whales”からの変化はありますか?

“Whales”って直訳するとクジラっていう意味なんですよね。でも賭けすぎちゃう人みたいな意味もあるらしくて。その感じが良くて“Whales”にしたんですよ。でももっといけるなと思っててリリックを創っていたら自然と“betbetbet”って書いてた。だから気持ち的には“Whales”と地続きなんです。

──“betbetbet”の歌詞は、どんな気持ちを表現したの?

明日後悔しないように生きるみたいな、ほんまにそこなんですよ。バンドが続けられなくなる未来って簡単に予想できるというか、誰か死ぬとか声が出なくなるとかいろんな理由を思いつくんです。だからやれることをやらなきゃいけないっていう使命感みたいなもんがある。バンドって足並みが揃ってるうちが華やとすごい感じるし、その間にやれることをやるべきだっていう考え方がみんなにあるので、金ないけどバイトしまくってめちゃくちゃ今を楽しんでますね。

──なるほど。

普段からこういう話をメンバーで共有するので、ちょっとずつ違いはあってもお互いを尊重しているし、ほかにやりたいこともないし。とはいえサラリーマンはすごいと思ってて。サラリーマンの友達は平気で朝起きて、土日仕事休みっていう生活をしてて、俺にはできないなっていうのはすごい感じるんです。ってなったら、生きる選択肢が音楽しかない。でも音楽のために生きる人生って最高なんですよ。例えば最悪なことがあるとするじゃないですか。それって俺的にはポイントが溜まるんですよ。めっちゃ最高な1日を過ごしたときのポイントとなにも違わない。常にワードを集めたり意識を除いてヒントを探しに行くっていう生活なので、こんな楽しい人生はないなって。

──歌詞を読みながら「Weekend は束の間」とかそういうことなのかなって。

サラリーマンはすごいっていう話なんですよね。あと、この曲のいちばんのキーは「往復新幹線で行きたいよTOKYO」なんですよね。これは、いちばん目の前にある願望ですね(笑)。

── “betbetbet”は、どういうふうに生み出されたの?

“betbetbet”は、下手ギターのKeishoと遊んでてノリで創ったんですよ。普段「曲を創ろう」ってなったら、いろんなアーティストを聴いて、「こっち方面ちゃう?」とか言いながら創る事が多いんですけど、“betbetbet”に関しては簡単さみたいなのを意識して。あとピンヴォーカルがめっちゃ多くなってきたので、「俺が歌いながら簡単に弾けるコードにするわ」って言いながら自分でコード進行を創ったんです。

──ちなみにいちばん曲を書いてる人って誰なの?

今は俺ですね。ちょっと遡って『Rosy』とかは、各々が2曲ぐらい創ってるんです。でも「DRAW IN A HEAD」からシングル4曲出して、もう1曲シングル“HALFAWAKE”を出して、7曲のEP『Something is likely to happen』を出したんですけど、それらは全部俺なんですよ。これは、俺がみんなに「やりたい」って言って。

──それはなぜ?

コロナですよね。修行でもあるし、時間が死ぬほどあった上に、デモもむちゃくちゃあった。だから「ちょっと俺のタームでやらせてくれ」って伝えて。

──コロナ禍のとき、メンバーは「俺も曲を創りたいんだけど」とはならなかったの?

俺らには0から1を作る作業と、1を10にする作業があって、0-1が俺とKeishoの担当なんですよ。Taitoはエンジニア的なポジションで動いているので、1-10なんですよね。Yuはどっちもできるけど、最近は1-10でアレンジメントのほうに回ってるという感じかな。なんでKeishoに「0-1担当、俺らでどんどんやっていこうか」って最近話しして。

──なるほど。

そして“betbetbet”は次のEPに入る予定なんです。だから今はちゃんとスタジオに入って、みんなで合わせながら構成を考えたり、細かいところのニュアンスを創ったりしていますね。

──なるほど。コロナもあって比重がDTMに寄ってたけど、また変わりつつあると。

そうですね。やっぱり同じことをやっててもしゃーないという考え方はあるんですよ。“Whales”は圧倒的に最強な曲ができたっていう自信があったのでちょっと特別だけど、ターム的には前回のEPで1回区切れて、スペシャルエディションみたいなノリで“Whales”がいて、次“betbetbet”からまた別の流れに変わっていくんです。

──なるほど。

高校生ぐらいのときにプライマル・スクリームにハマって。彼らってアルバムごとに毎回サウンドが違うじゃないですか。あれがめっちゃかっこいいと思ってるんです。長いこと音楽を続けるんやったらそうありたいっていう話を昔からしてて。ガラッと変えて「前のアルバムのほうが好きとか言われよう」みたいな。それぐらいのほうが楽しいし、かっこいいし、縛られないんですよ。

──どんどん変わっていったらいいんだ。

そうです。でも変わるとはいえみんなにちゃんと理解してもらいたいし、距離を縮めたいので、結びつけるものをどう表現していくかみたいな試行錯誤をしてます。

──試行錯誤に関して光は見えてる?

その光が、“betbetbet”を出して見えてくるかなと。

──2023年は、the McFaddinとしてどんな年にしたい?

2023年のthe McFaddinにベットしてくれるのは誰なんやろうって思ってます。俺たちはまじで大きい舞台でも戦えるはずだからこそ、「誰が俺たちに声をかけてくれるんだろう」ってワクワクしてますね。なので、夏は空いてます(笑)。どこへでも行くよっていう。
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